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電話をかけて

 「東京はいつも工事中だね」。東京スカパラダイスオーケストラと銀杏BOYZの峯田和伸がコラボレーションしてつくられた曲『ちえのわ』の一節だ。たしか夏目漱石も小説の中で同じ趣旨のことを書いていた気がする。高円寺も阿佐谷も、最近工事が多い。古くなった一軒家やアパートなどが解体されて、新しく建売住宅やマンションが建つ。そんな光景をたくさん目にした。だから何だということでもない。ただなんとなく、東京はいつも工事中だね、という歌詞が思い出されただけだ。

 

 昔の友人に久しぶりに会った次の日に、解体されて更地になった土地を見ると、感傷的になる。きっと失われた時を感じるからだろう。不思議なことだが、更地になって、次の建物が建てられると、前にそこに何があったのか思い出せなくなる。昔仲の良かった友人と何をして楽しんでいたのか、時間の流れの中で、思い出せるものと思い出せないものに分離してゆく。思い出そのものも、時間に洗われて変化するのかもしれない。感情も流れる、感覚も変化する。留まっているものなど何一つないのかもしれない。

 

 そういえば、過去に電話をかけてねと言ってくれたあの子はどうしているだろうか?ぼくは結局電話をかけなかった気がする。いやもしかすると、この記憶そのものが時間の経過の中で、事実に反して変化し形成されたものかもしれない。本当はそんなことなどなかった。そうだとしたら、少し悲しい。

 

 

                                          森田義貴 

更新日時 : 2022年11月15日 | この記事へのリンク : 

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