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残響

 先日、東京でも雪が降った。夜になるにつれて雪は積り、気温が下がっていった。身を切るような冷気が、頬や露出した手にあたり、吸い込む空気は冷たくて、肺の奥までスッとした。雪の舞う街灯の明かりがぼくは好きだ。白い雪と白い光、背景は夜の黒。傘をさして寒いのに、いつまでもいつまでも眺めていられる。

 あくる日、雪はもう溶けていた。気温が上がって太陽が照っている。軒先や屋根から、雪解け水がぽたぽたと落ちていく。その音が、昨日の夜降った雪の残響のように聞こえた。雪は降り積もるとき音はしないけれど、溶けるときには音がする。いや、違う。きっと降り積もる時にも音はしているのだ。あまりにも微かでぼくの耳には聞こえないだけで。

 夜通しかけて小さな音がたまってゆく。そして次の日、溶けたその雪の中から音が飛び出す。その音たちは、昨日の雪の微かな叫びの集積だ。



                             
株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年02月12日 | この記事へのリンク : 

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