不動産ブログ

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いつか花になっておくれよ

 阿佐ヶ谷から高円寺に向かう高架線の下を、学生が通っていく。杉並学院の生徒だろう。ぞろぞろと列を成して歩いている。にぎやかだ。女の子たちは手に流行りの小さな扇風機を持っている。もう私も高校生あるいは中学生たちを見て、自分の学生時代のことを懐かしむようになった。自分もあんな風にして仲間たちとぞろぞろ歩いていたのかと思うと、少しだけ感傷的な気分になる。フラワーカンパニーズは『深夜高速』のなかで十代はすぐ終わると歌っていた。その通りだと何故か今になって強く思う。

 私の同級生も結婚をしたり仕事を変えたり、同じように並んで歩いていたころとは大分違ってしまった。たかだか10年と少しの間にお互いの歩く道は全く変わってしまった。どこで道が分かれたのだろうか?

 あのころ一緒に踏んだアスファルトはきっともうひび割れてしまっていることだろう。


                                  株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年07月17日 | この記事へのリンク : 

猛暑と娯楽

 日本列島を連日猛暑が包んでいる。気温が30度をこえることなど当たり前で、時には40度近くにまでなることもある。汗も草も道路工事の職人も、みんな干からびたように日陰にうずくまっている。太陽が暑い、風が暑い、街が暑い、コンクリートが土が暑い。頭も赤熱してしまったようだ。熱気が皮膚から立ち上る。

 夏の娯楽といえば、なんだろうか。川遊び、海、プール、夏祭り、あるいは夜中にベランダで飲むビールだろうか。どの娯楽も涼しさと結びついている。風鈴の音と氷の塊、深夜十二時に買いに行くアイス、スーパードライの銀色の缶。だが、今年の猛暑にこのような娯楽は打ち勝つことができるのだろうか?

 外出そのものが危険とされる猛暑日だ。外に出ないで家の中でお過ごしください、この言葉はここ3年繰り返し繰り返し発せられている。エアコンの入った涼しい室内でなされる娯楽に、季節はあるのだろうか?ステイホームで季節を感じるのは難しい。したがって、時の流れを感じるのも難しい。

 酷暑、猛暑と感染症は似ている。娯楽から季節を奪うのだ。


                                 株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年07月11日 | この記事へのリンク : 

夢見る頃を過ぎても

 連休になると、阿佐ヶ谷の街には子供たちの姿や若者たち、比較的歳の若い夫婦など、平日にはあまり見かけない人々が姿を現す。毎日街を見ている私には、平時と連休との違いがよくわかる。歩く人の数も違う、年齢層も違う、街の雰囲気も違う。驚くほど、様々なところが違っている。休日の街は華やいでいて、平日の街はどこか静かだ。連休ともなると、その差は顕著だ。

 ところでどうして私はこんなに、休日と平日の差が気になるのだろう。それはもしかしたら、昔から私には休日と平日の違いがわからないからだろう。気持ちの上でも差異はない。休み=楽しい、楽、平日=苦しい、つまらない、そういう図式は私の中にはない。ただ、店での仕事があるかないか、学生時代は学校あるいは部活があるかないか、極めて実務的で平板な認識があるのみだ。

 私はつまらない人間なのかもしれない。それゆえに、夢見る年頃を過ぎてもなお、街の華やぎや明るい雰囲気に惹かれるのかもしれない。


                                  株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年05月02日 | この記事へのリンク : 

退屈な休日たち

 休日は退屈だ。平日ならば仕事があるけれど、仕事の時間の分だけ空くので、手持ち無沙汰になってしまう。昔から休日の時間の使い方がわからない。小学生のころは塾や習い事、中学・高校生のころは部活、大学生のころはアルバイトとサークル、思えば毎日何かしらの活動、仕事のようなものをやってきた気がする。だからだろうか、何もない時間というものに慣れていない。

 世の中の流れは長期休暇推奨、週休3日制、休日の積極的推進となっているみたいだ。しかし、何もしないで家で一日中過ごすのは退屈に過ぎるし、どこかに出かけて遊ぼうと思えば、それ相応の金がかかる。結局、仕事くらいしかやることがない。年間、週単位、一日の時間の使い方が仕事を中心に組み立てられているので、ぽっかりと空いた空白の時間に戸惑う。長すぎる休暇は停滞を感じさせる。昨日と同じ何もない休日がこの先ずっと続いてしまったら…、そう思って不安になる。

 明日からゴールデンウィークだ。私の休みは3日間だが、今のところ何も予定がない。おそらく、平日と同じように本を読み、音楽を聴き、映画を見て過ごすだろう。2日目からはきっと退屈に違いない。


                                  株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年04月28日 | この記事へのリンク : 

青春とは黒い炎

 阿佐ヶ谷駅前に書楽という書店があって、私はよく行く。先日その店の文庫本コーナーの近くで、10代のうちに(20代だったかもしれない)読みたい本という特設棚があった。その中の二つの本に目が留まった。1冊はドストエフスキー『地下室の手記』、もう1冊はボードレール『惡の華』。両方とも新潮文庫から出版されているものだ。この二つの本は私自身、19歳の時と20歳の時にそれぞれ読んだ。当時の私は衝撃を受けた。『地下室の手記』を読んで、人間というのはこんなにも煮詰まれるものなのかと思い、『惡の華』を読んでその象徴的で過剰な表現にやられた。

 29歳の今から当時を振り返ってみると、平気で過剰で、やりすぎで、煮詰まっていた。そういう自分が確かに存在した。そういう自分だったからこそ、この二つの本に引き付けられたのかもしれない。

 私は若すぎる日々(青春と呼ぶことにしよう)とは、黒い炎だと思う。世界中の薔薇を集めて、その薔薇の山に火をつける。その時に燃え上がる黒い炎だ。やがて薔薇は灰になる。そしてその灰の中から新しい薔薇が生まれる。



                                                   森田義貴

更新日時 : 2022年04月18日 | この記事へのリンク : 

休日はどこにも行かない

 私の休日は週1日である。水曜日だ。土日祝日も基本的にない。週6日きっちりと仕事だ。休みが1日だと気が付いたことがある。遠くに行かないのだ。電車に乗って小旅行とか、温泉とか、横浜中華街だとか、自分の家から距離のあるところへはまずもって行かない。疲れるからだ。1日大変な思いをして遠出をすると、精神と肉体に疲労がたまってしまって、次の日の仕事に支障がでる。だから休日は遠出をしない。

 休日は専らタブレットで映画を見ているか、自宅か図書館で本を読んでいるか、近所をあてもなく歩き回るかのどれかだ。休日のほとんどの時間を一人で過ごす。意識して行動を変えようと思っても、どうしてもこうなってしまうのだ。

 休日の自分の行動が習慣なのか、趣味なのか、あるいはその両方なのか、それはよくわからない。別に幸福も不幸も不満も感じていない。ただいつの間にか、自然に、一人になってしまう。


                                  株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年03月27日 | この記事へのリンク : 

残響

 先日、東京でも雪が降った。夜になるにつれて雪は積り、気温が下がっていった。身を切るような冷気が、頬や露出した手にあたり、吸い込む空気は冷たくて、肺の奥までスッとした。雪の舞う街灯の明かりがぼくは好きだ。白い雪と白い光、背景は夜の黒。傘をさして寒いのに、いつまでもいつまでも眺めていられる。

 あくる日、雪はもう溶けていた。気温が上がって太陽が照っている。軒先や屋根から、雪解け水がぽたぽたと落ちていく。その音が、昨日の夜降った雪の残響のように聞こえた。雪は降り積もるとき音はしないけれど、溶けるときには音がする。いや、違う。きっと降り積もる時にも音はしているのだ。あまりにも微かでぼくの耳には聞こえないだけで。

 夜通しかけて小さな音がたまってゆく。そして次の日、溶けたその雪の中から音が飛び出す。その音たちは、昨日の雪の微かな叫びの集積だ。



                             
株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年02月12日 | この記事へのリンク : 

祭りのない街

 新型コロナウイルスの感染があって、阿佐ヶ谷でも主要な祭りがいくつか開催されなくなった。七夕祭り、ジャズフェスティバル、神社等での祭り…。ジャズフェスティバルなどは一部室内で開催されて、インターネット配信されたらしいが、商店街や駅前広場を使った野外の催しはなくなってしまった。

 ぼくは祭りが苦手だ。それは、人混みが苦手だからだ。小さいころからあまり祭りには行かなかった。小学生のころ夏祭りで、太鼓の発表をしたことはあるが、それ以外は特に祭りに行った記憶がない。だから、夏祭りの思い出なんかも特にない。思い出せるのは、少女漫画で読んだよくある夏祭りのシーンだけだ。

 それでもなんとなく街に祭りがないのは寂しい。あの街に纏う何とも言えない喧噪の感覚とざわめき。行きかう人々の浮かれたような顔、浴衣、法被、子供たち。なくなってみると、どこか恋しいし懐かしい。祭りはきっと記憶なのだ。街にしみ込んだ目には見えない人々の記憶。それが今、祭りのなくなった街で地面からしみだしている。そんな気がする。

 きっとこんな気持ちも祭りがまた始まったら、忘れてしまう。そうやって、街にしみ込む祭りの記憶は重ねられてゆく。それで良い。そういうものだから。また祭りのはじまる街を夢見て、今は記憶の中の祭りを思う。

 



株式会社菊商事 森田義貴

更新日時 : 2022年02月05日 | この記事へのリンク : 

春の雪

こんにちは。株式会社菊商事の森田です。

今日2020年3月14日、東京では雪が降りました。春の雪です。珍しい。


雪の降る様を見ていて、ふと、思いました。

そういえば、三島由紀夫の小説に『春の雪』ってあったな。たしか、大学3年のころに読んだな。




なぜ、思い出したのか考えてみると、昨日テレビで三島のことをやっていたからかもしれません。
あるいは、ぼくが今、『禁色』を読んでいるからかもしれません。


とにかく、そう思ったのでした。




三島由紀夫はぼくの好きな作家の一人で、いくつか作品を読みました。

『春の雪』を含む豊饒の海4部作、『金閣寺』、『鏡子の家』、『近代能楽集』、『潮騒』、『青の時代』…etc


どれを読んでも、「良い」と思うのですが、どこがいいの?と聞かれると、はっきり答えられません。




格調高い文体か、逆説性か、宿命か、悲劇性か、緻密な描写か、判然としません。


うーん…考えて、考えて、いま気が付いたのは、「何がいいのか分からないけど、確かに何かは良くて、その何かを知りたい」
と思うからいいのだということです。




なんだかぐるぐるしてきましたね。でも、「古典」というのはそういうものなのかもしれません。

作品そのものの中に問いが含まれていて、各々それを抜き出して、考え、新たな創作をする(もちろん、この「創作」にはものを書く以外のことも含まれます)。




そういう意味で、三島の作品はやっぱり古典といえそうです。




さあ、雪が降るのを見て、ここまで来てしまいました。しかしこれも、『春の雪』という本の力です。

だって、その本が書かれなければ、その本を読んでいなければ、このように「古典」というものを考えることもなかったかもしれないのです。

ぼくは本の力にひっぱられてしまったのです。


「古典」とは恐ろしいものですね。





さて、外を見るといつしか雪は止んでいました。もう少し、「春の雪」を見ていたかったな、というのがぼくの今の感想です。


三島が死んでもう何十年もたっています。ぼくが『春の雪』を読んでからも、5年くらい経っています。


そうして今、ぼくははじめて、春に降る雪を見たのでした。


 

更新日時 : 2020年03月14日 | この記事へのリンク : 

夜の公園でビル・エヴァンスを聞いている②

こんばんは。菊商事の森田です。前回の続きです。

はじめに、補足です。「ポートレイト・イン・ジャズ」というのは、アルバムの名前です。
以下、登場する曲名はすべて「ポートレイト・イン・ジャズ」の収録曲です。




見事ビル・エヴァンスにハマったぼくは、イヤホンを耳に入れて、毎日聞いていました。

そのころのぼくには、放浪癖があって、夜中によく近所まで散歩にでかけていました。




ぼくがよく行っていたのは、高円寺と阿佐谷のちょうど間くらいにある、馬橋公園という公園です。
緑が多くて、小さな池や子供の遊ぶ遊具なんかがあります。きれいないい公園です。


そこに夜中10時ごろいって、少年野球やサッカーをやるグラウンドの横にある、小さな広場
に入ります。街灯の下にあるベンチに座ると、風が木々を揺らすざわめきが聞こえます。




それがなんだか心地よくて、一度外したイヤホンをまた耳に入れ、おもむろに
再生ボタンをタップします。



「Autumn Leaves」、「Someday My Prince Will Come」、「Blue In Green」…



たぶんですけれど、こういうのを今の言葉じゃ、「エモい」っていうんでしょう。



そうなんです、ジャズはエモいのです。

そう、「エモい」のです。






で、唐突に阿佐ヶ谷町紹介へまいります。2019年10月25日、26日に阿佐谷ジャズストリート2019、
が開催されます。



喫茶店や神社、教会、小中学校の体育館、飲食店など阿佐谷のいたるところで、ジャズが響きます。
駅前には特設ステージもできます。「エモい」ジャズが聞ける、というわけです。






もうお気づきになられましたよね。これは、阿佐谷ジャズストリート2019の紹介文だったのです!


あ、でも、夜の公園でぼくがひとりジャズを聞いていたのは本当です。

すいませんでした。無理やりでした。


申し訳ございません。しかし、よろしければ、また。

更新日時 : 2019年10月24日 | この記事へのリンク : 




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